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19回の試作で辿り着いた計量機構 — プロテインディスペンサーの技術の裏側

プロテインディスペンサーの核は、計量機構にあります。「レバーを引くだけで、決まった量の粉が出てくる」。言葉にすると簡単ですが、この仕組みを安定して動かすまでに、REV0からREV18まで19回の試作を重ねました。

そしてこの計量機構の着想は、実は前回の開発ストーリー後編でお伝えした「電動化の挫折」から生まれたものでした。電動化のために試した360度回転方式を、手動でやればいいのではないか——その閃きが、この物語の出発点です。

なぜ「粉を量る」が難しいのか

液体なら、コップに注げば体積で量れます。固体なら、重さを量ればいい。しかしプロテインパウダーは、液体でも固体でもない「粉体」です。粉体には、他の素材にはない厄介な特性があります。

ブリッジ(粉詰まり)。粉の粒同士がアーチ状に噛み合って、出口の上で止まってしまう現象です。砂時計の砂が途中で止まるのと同じ原理ですが、プロテインは砂よりも粒が不均一なため、はるかに頻繁に起こります。

ラットホール。容器の中央だけ粉が落ちて、壁面に沿って粉が残る現象です。見た目には減っているのに、壁面にこびりついた粉が落ちてこない。計量の精度がどんどん狂っていきます。

市販のシリアルディスペンサーや調味料入れでプロテインを試した方がいれば分かると思いますが、まず間違いなく詰まるか、出すぎるか、どちらかが起きます。プロテインパウダーに特化した計量機構が必要だった理由は、ここにあります。

出発点:電動化の挫折と、米国市場という壁

すでに国内で販売していた既存のプロテインディスペンサー(DP-M1)は、レバーの左右往復運動で計量する方式でした。しかしこの方式は、米国の先行特許との関係で米国市場に出せないという壁を抱えていました。

そんな中で挑戦したのが電動化です。詳細は開発ストーリー後編に書きましたが、電動化のために試した「計量マスを360度回転させる方式」は、結局モーターのコストと制御の壁を越えられず断念しました。

ただ、捨てずに残ったものがありました。「360度回転させる」というアイデアそのものです。これを手動で——レバーをラチェット式にして少ない動きで計量マスを回転させる——という形に置き換えれば、米国の先行特許とは異なる独自方式になり、しかも振り子式の構造的制約からも解放される。日本・米国の双方で特許性を事前調査し、抵触しないことを確認したうえで、ゼロからの設計がスタートしました。

ここから、19回にわたる試作の旅が始まります。

REV0〜REV3:構想から「ブリッジ対策」へ

REV0 は構想設計。紙の上の絵を、ようやく形にした最初のモックアップです。

REV1 で本体のスナップフィットを別部品として設計し直し、組立性を確保。REV2 では計量の回転方向を見直し、ホッパー下の開口形状を検証しました。

そして REV3 で最初の壁にぶつかります。粉を貯めておくホッパーの中で、プロテインがブリッジを起こして落ちてこない。回転機構もスナップフィットの遊びで空回りしてしまう。粉体特有の性質と、機構部品の精度、その両方を同時に押さえる必要があると分かった瞬間でした。

REV4〜REV11:「安定して落下させる」ための8回の試行錯誤

ここからの8回は、すべて同じテーマでした。

「プロテインを安定して計量升に落下させること」。

ホッパーから計量升へ、毎回同じ量・同じタイミングで粉を流し込む。たったそれだけのことが、どうしても安定しません。プロテインのメーカーが変わると挙動が変わる。粒度が変わると詰まる。湿度が変わると流速が変わる。

REV4からREV11まで、撹拌羽根の形、シャッターの形状、計量升の数や配置を一つずつ変えながら、8回連続で同じ課題に挑み続けました

途中で REV9 ではレバーの操作性も改善。粉の落下対策と並行して、人の手に馴染む動きを少しずつ詰めていきました。

このフェーズが、開発期間の中で一番長く、一番苦しい時期でした。「設計→モックアップ製作→テスト→失敗の原因解析」を8回繰り返して、ようやく粉が安定して落ちるようになったのです。

REV12〜REV15:操作性と耐久性を作り込む

粉が安定して出るようになると、次に見えてきたのは「使い手側の課題」でした。

REV12〜13 ではレバーを引いた後に自動で元の位置に戻る「レバー戻し機構」を導入。組間違い防止の仕組みも追加し、ノズルを延長して粉の飛散をさらに抑えました。

REV14 で連結ボスをPOM(ポリアセタール)切削に変更。樹脂の中でも機械強度と摺動性に優れた素材を使い、可動部の耐久性を引き上げます。

REV15 では回転方向を最終検証し、レバーと計量升の形状を変更。連結ボス周りの強度もさらにアップさせました。

REV16〜REV18:最後の仕上げ

REV16 でノズルとキャップを追加し、本体と連結ボスのアタリ面を最終調整。REV17 ではデザイン検証と並行して、ノズルからの微小な粉漏れの防止、組間違い防止の強化、アタリ面の微調整を行いました。

そして REV18 で、スプリング挿入部のボス高さを調整。これが量産化に進める最終形となりました。

25,000回の耐久試験——5年使っても壊れない

最終仕様が固まった後は、量産品としての耐久性検証です。

「5年間、毎日使い続けても問題ないこと」を証明するため、以下の式で試験回数を設定しました。

1日3回 × 9回の往復運動 × 365日 × 5年 × 安全率1.5 ≒ 約25,000回

内製した耐久試験機でこの回数を実際に動かし、可動部の劣化、樹脂部品の破損、機能上の不具合がないことを確認しました。テスト後、すべての項目で問題は発生していません。

プロテインディスペンサーの計量機構が特許として認められるまで

この計量機構は、特許庁の審査を経て特許第7580860号として登録されました。

特許の要点は、レバーの往復運動をラチェットで一方向の回転に変換し、計量升を回転させながら粉体を安定して計量・払い出す方法にあります。従来の粉体ディスペンサーとは異なるアプローチで、プロテイン特有の課題——ブリッジ、ラットホール——に対応している点が認められました。

現在、この特許は米国でも出願中です。

技術の先にあるもの

19回の試作を通じて、Miaomadaは「粉体を正確に計量して払い出す」技術を蓄積しました。この技術はプロテインだけでなく、粉ミルク、粉末サプリメント、スパイスなど、さまざまなパウダー製品に応用できる可能性を持っています。

ただし、まずはプロテインです。世界中でプロテインを飲む人が増えている今、「スプーンで量る」以外の選択肢を提供すること。19回の試作で辿り着いた計量機構が、その答えになると信じています。

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