プロテインディスペンサー開発ストーリー【後編】— DP-M2、挫折から世界へ
前編では、受託加工の町工場から生まれたDP-M1が、Makuakeで133人のサポーターに届くまでをお伝えしました。後編では、電動化への挑戦と挫折、そこから生まれたプロテインディスペンサーDP-M2の開発と、米国市場への挑戦についてお伝えします。
プロテインディスペンサーの電動化に挑んだ——そして挫折した

DP-M1の開発を終え、Makuakeで金型を作り直した作業も一段落した頃、次に考えたのは電動化でした。DP-M1とはまったく別の製品として、ボタンひとつで計量が完了するプロテインディスペンサーを作りたい。
しかし、ここには大きな壁がありました。親会社の昭和電器はプラスチック成形、金属加工、組立——いわゆる受託加工業です。電動化の技術はゼロ。電子回路の知識もなければ、基板や電装周りの開発をどこに外注すればいいのかすらわからない。そんな状態でした。
それでも「まずやってみよう」と、手探りで開発をスタートしました。
DP-M1はレバーを左右に振り子のように動かして計量するタイプです。これを電動化するために、計量マスが360度回転する方式に設計を変更。モーターで回す構造です。
動くものはなんとか作れました。ただ、問題はモーターでした。ホッパーに1kgのプロテインを入れた状態で計量マスを回すには、かなり大きなモーターが必要になる。モーターのコストだけで製品価格が跳ね上がってしまう。さらに、モーターを正確に止める方法もわからない。
2〜3ヶ月間取り組みましたが、コストと技術の壁を越えられず、電動化は断念しました。後から振り返れば、ギアボックスでギア比を変えれば小型モーターでも回せたのですが、当時はその知見がなかったのです。
捨てきれなかった米国への思い
電動化は断念しても、米国市場への思いはずっと捨てきれずにいました。
米国のプロテイン市場は日本の6〜7倍。健康志向が高く、日常的に運動する人の数が日本とは桁違いに多い。市場規模だけ見ても、日本よりはるかに多く売れる可能性がありました。
しかし、DP-M1は海外メーカーが保有する米国特許との関係から、米国での販売を見送っていました。米国に出るには、既存の特許に抵触しない、独自の計量機構が必要でした。
プロテインディスペンサーDP-M2の着想——電動化の「失敗」が道を開いた
DP-M1にはまだ課題が残っていました。
ひとつは計量の安定性。金型を作り直した後も、100種類のプロテインの中で2種類ほど、うまく計量できないフレーバーがありました。同じブランドでも味によって粉質がまるで違う。さらに後から分かったのですが、同じ味でもロットによって粉質が変わることがある。プロテインメーカーに問い合わせたところ、原料の素材自体が変わることがあるとのことでした。もっと確実にプロテインを計量できる方法を考えなければいけない。
もうひとつは粉の飛散。DP-M1は振り子式のレバーが排出口の上を通過する構造になっていました。これはプロテインの粉こぼれを防ぐために必要な構造でしたが、その代わりに排出口からシェイカーまでの距離が長くなり、粉が飛び散る原因になっていました。ノズルをつけたいが、振り子式の構造では難しい。
この2つの課題を考えていたとき、ふと思いついたのです。
電動化で試した360度回転方式を、手動でやればいいのではないか。
レバーをラチェット式にすれば、少ない角度、短い移動距離で計量マスを回転させられる。振り子式の構造的な制約から解放され、排出口の設計も自由になる。
そして弁理士に相談したところ、この360度回転のラチェット式は、既存の海外特許とは異なる独自の計量機構であることが確認できました。つまり、米国でも販売できる可能性が開けたのです。
計量の課題を解決できる。粉の飛散も解決できる。そして米国でも販売できる——。「これはいける」。DP-M2の開発が始まった瞬間でした。2023年5月のことです。
プロテインの粉が落ちない——計量の壁との戦い、再び

360度回転方式の計量部は構想通りに固まり、試作品を重ねて形にしていきました。しかし、またあの問題が立ちはだかります。落ちない粉です。
DP-M1の時に対応しきれなかった粉が、やはり落ちない。回転方式に変えても、粉自体の性質は変わらないのです。
最終的にたどり着いた解決策は、アジテーター(攪拌羽根)の大幅な改良でした。DP-M1にもアジテーターはありましたが、DP-M2では羽根の形状を根本から変え、ホッパーの内側に沿って動く構造にしました。ホッパー下部の粉を積極的に攪拌することで、どんな粉質のプロテインでも安定して落ちるようになったのです。
世の中に「粉を機械的に計量するもの」はほとんどありません。だいたいスプーンですくっている。その中で、粉質に左右されない安定した計量ができるプロテインディスペンサーを作れたことは、ひとつの突破口だったと思っています。
2024年1月、約8ヶ月の開発を経てDP-M2が完成しました。
プロテインディスペンサーの特許取得と米国出願
開発が一段落した時点で弁理士に見てもらったところ、特許が取れる見込みがあることがわかりました。そして今回は最初から米国出願を見据えていました。
2024年5月に日本で特許出願。早期審査を経て、同年11月に特許第7580860号として登録。取得後すぐに米国への特許出願を行い、現在審査中です。
DP-M1の頃は「特許は国ごとに取るもの」という基本すら知らなかった。それが今、日本で特許を取り、米国でも出願している。知的財産の戦略も、製品と一緒に成長してきました。
2回目のMakuake——179人が選んだ「次の答え」
2024年11月、MakuakeでDP-M2のプロジェクトを開始。2ヶ月間の募集を経て、179人のサポーターから応援購入総額294万7,500円という結果でした。DP-M1の133人・189万5,000円と比べて、サポーター数は約35%増、金額は55%以上の成長です。

2025年3月にサポーターへの配送を完了し、同年5月にはAmazonと楽天で一般販売を開始しています。
ALENNEというブランド
DP-M2の販売が始まってから、プロテインディスペンサーから派生してスポーツグッズなどへ展開していくなら、製品ブランドが必要だと考えるようになりました。考え抜いて決めた名前がALENNE(アレンネ)。「Ally(味方)」と「Endurance(持続)」を掛け合わせた造語で、継続を味方するという思いを込めています。2026年2月に日本で商標登録が完了し、米国でもこれから出願する予定です。
Kickstarterへ——プロテインディスペンサーを世界市場へ
受託加工業の昭和電器から、自社商品のMiaomadaへ。そしてMiaomadaから、消費者向けブランドのALENNEへ。
次の舞台は、米国Kickstarterです。世界中のイノベーターやアーリーアダプターが集まるプラットフォームで、プロテインディスペンサーという新しいカテゴリーの製品を世界に問う。Makuakeの経験があるとはいえ、言語も市場も文化も違う海外への挑戦は、まったく新しい戦いです。
2026年4月、プレローンチを開始しました。5月にはメインキャンペーンが始まります。
振り返れば、電動化に挑んで挫折したあの2〜3ヶ月がなければ、360度回転方式という着想は生まれず、DP-M2は存在しなかったかもしれません。そしてDP-M2がなければ、米国市場への道も開けなかった。失敗が、次の製品と新しい市場をつくった。ものづくりは、そういうことの連続なのだと思います。
そして——電動化の夢は、まだ捨てきれずにいます。
毎朝のプロテインをもっと手軽に

ALENNEプロテインディスペンサーは、スプーン不要・片手操作で、毎日の計量を5秒に変えます。特許取得の計量機構で、粉こぼれや計量のストレスから解放されます。
