Makuakeで2度のクラウドファンディング成功の裏側【後編】— DP-M2、世界を見据えた挑戦
前編では、DP-M1のMakuake挑戦を振り返りました。100種類のプロテインとの格闘、プロジェクト中の仕様変更、ギリギリで届けられた安堵。
後編では、DP-M2の開発裏側とMakuake 2回目の挑戦についてお伝えします。
DP-M1の限界 — 「これだけじゃダメだ」

DP-M1のMakuakeプロジェクト中、100種類のプロテインを計量テストする中で、身に染みて感じたことがありました。
プロテインの粉質はメーカーやフレーバーによって全然違う。DP-M1の計量方式では対応しきれないものがたくさんある。この方式だけでは、「どんなプロテインにも使えるディスペンサー」にはなれない。
その思いがフツフツと湧き上がる中で、次の開発を始めました。
電動化の挫折から生まれた360度回転方式
最初に挑戦したのは電動化でした。ボタンひとつで計量が完了するプロテインディスペンサー。ただ、この挑戦は断念しています。詳しくは開発ストーリー後編に書いた通りです。
ただ、電動化のために試した「計量升を360度回転させる方式」のアイデアは捨てずに残っていました。これを手動で——レバーをラチェット式にして回す——という形にすれば、米国の先行特許とも抵触しない独自方式になる。
2024年4月から開発を開始。約1ヶ月で構想がまとまりました。DP-M1ではレバーの回転角度が120度だったのを、DP-M2では回転角度を変更し、ノズルも新たに搭載する構造にしました。
構想ができた段階で米国の特許調査を依頼。弁理士からの修正提案を盛り込みながら、開発を進めていきました。
ラットホール問題 — 粉が壁面に残って落ちてこない

計量機構の動き自体は比較的スムーズに仕上がりました。問題は、ホッパーから計量升に粉を落とす部分でした。
DP-M2はDP-M1よりもホッパー下の開口部を大きくして、粉がしっかり落ちてくるようにしました。ところが、開口部を大きくしたことで逆にラットホールが目立つようになった。
ラットホールとは、容器の中央だけ粉が落ちて、壁面に沿って粉が残ってしまう現象です。見た目には減っているのに、壁面にこびりついた粉が落ちてこない。計量精度がどんどん狂っていきます。
解消するために、撹拌羽根の形状を何度も何度も変えました。長い羽根、短い羽根、何本にするか。1つずつ変えては計量テストを繰り返す。最終的に、安定して粉を落とせる形状にたどり着くまで、かなりの試行錯誤を重ねました。
計量升が6個になった — そして土台問題が再燃

DP-M1の計量升は2個。DP-M2では6個に増えました。これによって計量の精度と安定性は上がったのですが、回転させるのに必要なトルクも大幅に増えた。
DP-M1と同じ土台では、プロテインを1kg入れた状態でレバーを操作すると、本体が動いてしまう。土台を大型化して、より重く、より安定させなければいけない。
部品点数も15点から17点に増え、金型も計量部を中心に新規で11型を製作。DP-M2の金型だけで1,485万円。DP-M1の改造・修正分も含めると、金型への投資は合計で3,600万円を超えました。
材料問題 — 日本の食品衛生法だけでは足りなかった
DP-M2は最初から米国市場を見据えていました。つまり、日本の食品衛生法に加えて、米国FDAの規制にも適合した材料を使わなければいけない。
ここでまた材料選定が難航します。
日本の国内メーカーで、ABSの食品衛生法+FDA両方に適合したグレードは見つかりませんでした。ABSが食品容器に使われること自体が少ないので、そこに対応したグレードの開発優先度が高くないのだと思います。
最終的に、ABSは台湾の奇美(チメイ)、PSは台湾の華孚(カオフ)のグレードが適合していることがわかり、採用しました。POMは日米どちらの規格にも対応していたので、DP-M1から変更なし。
また、当初は計量部にPP(ポリプロピレン)を使う予定でしたが、成形品にしてから強度が不足していることがわかり、POMに変更しています。
FDA分析 — 初めての経験、結果が出るまでの不安
材料がFDA規制に適合しているだけでは不十分です。実際の成形品を分析機関に送って、試験を行い、問題がないことを証明する必要がありました。
この工程は完全に初めての経験でした。そもそも分析機関を探すところから始めなければいけない。見つけて試作品を送って、結果が出るまでの間、本当にOKなのかどうか不安でした。
結果的には問題なくクリアできましたが、海外展開を見据えた製品開発の大変さを実感した場面でした。
計量目安をやめた理由 — 同じプロテインでも粉質が変わる
DP-M1では計量目安を付けていましたが、DP-M2では付けていません。
理由は、DP-M1の時に購入したプロテインを時間が経ってから同じものを再度購入したところ、粉質がまったく違っていたからです。
メーカーに確認したところ、ロットによって原料の調達先が変わることがあり、そのため粉質が変わる可能性があるとのことでした。大手メーカーでもそうだとすれば、他のプロテインも同様でしょう。
つまり、ある時点で「このプロテインは1回○gです」と計量目安を出しても、次に買った同じプロテインでは数字が変わってしまう可能性がある。それなら計量目安は意味がないと判断し、DP-M2では添付をやめました。
2回目のMakuake — 179人が「次」を選んでくれた

2024年11月、DP-M2のMakuakeプロジェクトを開始。
プロジェクトページは、DP-M1の時にもお世話になった制作会社に依頼しました。インフルエンサーもDP-M1の時に協力してくれた方を中心に、今回は人数を少し絞って依頼。
LINEへの導線としてランディングページも作りましたが、正直なところ、導線設計がよくわからなくてうまく活用できませんでした。ランディングページを作ってLINEのお客さんを集め、周知したくらい。ここは次の課題です。
それでも、179人のサポーターから294万7,500円。DP-M1の133人・189万5,000円と比べて、サポーター数は約35%増、金額は55%以上の成長でした。DP-M1の認知が少なからず影響していると感じています。
特許取得、そして米国出願
DP-M2の開発が終了した時点で、すぐに日本で特許を申請。特許第7580860号として取得できました。そして間を置かずに米国への特許出願も行っています。米国の方は現在審査中です。
「Protein Dispenser」の商標も日米で取得済み。プロテインディスペンサーという言葉自体がまだ一般的ではないからこそ、カテゴリーごと自分たちのものにするという戦略です。
そして3回目の挑戦 — Kickstarter
Makuakeでの2回の挑戦を経て、次の舞台は米国Kickstarterです。
日本で312人が「欲しい」と言ってくれた。特許を取得し、FDAにも対応した。材料も金型も、世界で売れる製品として準備は整った。
言語も市場も文化も違う海外への挑戦は、Makuakeとはまったく別の戦いになるはずです。でも、DP-M1で学んだ「プロジェクト中に問題が見つかっても、逃げずに向き合う」という経験は、どこの市場でも活きると思っています。
プロテインディスペンサーの開発経緯について詳しくは、開発ストーリー前編・後編をご覧ください。計量機構の技術的な裏側は19回の試作で辿り着いた計量機構で詳しく紹介しています。
ALENNEプロテインディスペンサーは、Makuakeで累計312人のサポーターに選ばれた日本製のプロテインディスペンサーです。特許取得済みの計量機構を搭載し、レバーを引くだけで計量が完了。1kgまでのパウダーを保管でき、飛散を抑えるノズル構造で粉こぼれも軽減します。
