プロテインディスペンサー開発ストーリー【前編】— DP-M1はこうして生まれた
プロテインディスペンサーという製品は、世の中にほとんど存在しませんでした。コーヒーにはコーヒーメーカーがあり、お米には米びつがある。なのにプロテインパウダーだけは、いまだにスプーンですくって量るのが「当たり前」のまま。この違和感が、すべての始まりでした。
筋トレの楽しさと、毎朝の面倒くささ

Miaomada株式会社の代表・本田敬一郎がプロテインを飲み始めたのは、40代半ばのことでした。
もともと体を動かすのが好きで、長年ジョギングを続けていました。あるとき自宅の近くにジムがあることに気づき、通い始めたのがきっかけで筋トレにハマります。やればやるほど筋肉が大きくなっていくのが実感できて、どんどん楽しくなっていく。筋肉を大きくするにはプロテインがいいと知り、飲み始めました。
体にいいことは分かっている。でも毎朝、袋を開けて、スプーンを探して、すりきりにして、シェイカーに入れて——この一連の作業が、とにかく面倒くさい。
「飲むのは5秒。でも準備に1分かかる。」
3日坊主で終わり、また再開して、また止まる。これを繰り返すうちに気づいたのは、自分の意志が弱いのではなく、仕組みが面倒すぎるということでした。
「自社商品を作りたい」——事業企画室の発足

プロテインディスペンサーを最初から作ろうと思っていたわけではありません。
Miaomadaの親会社である昭和電器株式会社は、東京・板橋区で創業94年目を迎える受託加工業——いわゆる下請けの会社です。金属加工、樹脂成形、組立と、ものづくりの技術は持っている。けれど自分たちの名前で売る商品がない。「自社商品を作りたい」という思いは、社内にずっとありました。
ただ、思いだけがあって、なかなか実行に移せない。その状況を変えるために、昭和電器の社長が事業企画室を立ち上げました。本田はそこに配属され、「今までの業務は全部やらなくていい。新商品を作れ」と言われます。
いくつかアイデアを出し、試作も作ってみたものの、なかなか「これだ」という商品にたどり着けない日々が続きました。そんなある日、ふと思い浮かんだのが——
「プロテインを簡単に計量できるものって、世の中にないよな」
毎朝感じていた面倒くささが、新商品のアイデアにつながった瞬間でした。2021年9月のことです。
先行品を発見——海外メーカーのプロテインディスペンサー
「世の中にない」と思っていたプロテインディスペンサーですが、ネットで調べてみると、実はイスラエルのメーカーが作っていました。
すでにあるならダメか——と一瞬思いましたが、日本では売られていません。とりあえず買ってみようと、個人輸入で取り寄せました。
届いた製品をいろいろ試してみると、問題点がいくつも見えてきます。
- 粉が漏れる:レバーを操作すると、隙間からプロテインがポロポロとこぼれ落ちる
- サラサラの粉だとダダ漏れ:レバーを中途半端な位置にすると、粉がどんどん落ち続ける
- シェイカーが入らない:排出口の下にシェイカーを置けない設計
- 分解・洗浄ができない:ネジで組み立てられており、定期的にバラして洗えない
- 粉が残る:最後の方になるとプロテインが容器内に残ってしまう
「これは買っても使えないよな」——それが正直な第一印象でした。と同時に、「これなら自分たちで作っても勝負できるんじゃないか」という手応えも感じました。
特許の壁と、弁理士のひと言
その製品を使ってみて、課題は明確になりました。ただ調べてみると、そのメーカーは米国で特許を取得しています。特許があるなら、自分たちで作っても売れないのではないか——そう思い込んでいました。
知的財産のことなど何も知らなかった本田は、弁理士に相談しました。すると意外な答えが返ってきます。
「特許は国ごとに取得するものです。そのメーカーは日本では特許を取得していませんから、日本国内で独自に開発・販売する分にはまったく問題ありません。ただし、米国では売れません。」
特許は国ごとに取得しなければ効力がない——この基本すら知らなかったのです。日本国内であれば、自分たちで独自の計量機構を開発して販売できる。この事実を知ったことで、開発は一気に動き始めました。
粉との戦い——試作の日々

海外メーカーの製品で見えてきた課題をすべて解消する、独自の計量機構を持った製品を作る。方針は決まりました。しかし、ここからが長い戦いの始まりでした。
最初にぶつかった壁は、粉の漏れでした。計量するために動かすと、排出口以外の場所から粉がこぼれる。レバーの配置を変え、接続方法を変え、何度も試作を繰り返しましたが、なかなか解決できない。「粉が漏れる、粉が漏れる、これじゃ使えない」——その繰り返しでした。
粉漏れの問題をクリアした後は、計量の安定性との戦いです。1回の操作で出てくる量にバラつきがある。数値目標を設定し、その精度を追い込むためにさらに試作を重ねました。
2021年9月に開発をスタートし、試作品がほぼ完成したのが2022年3月。約半年間、粉と格闘し続けた日々でした。
[写真: 試作品の変遷]
量産化、会社設立、そして商標
2022年4月、量産に向けて金型の製作を開始。金型は昭和電器が主導し、プラスチック成形品は福島県の矢吹事業所で、土台の金属加工は岩瀬工場で製作。それらを矢吹事業所に集めて組み立てる体制を整えました。
量産化と並行して、「Protein Dispenser」の商標登録にも動きました。2022年12月に登録(登録第6648352号)。「プロテインディスペンサー」という言葉は、一般的なカテゴリー名と誤解されかねない名前です。しかし、あえてこの名前で商標を取った理由があります。そもそもこの言葉自体が世の中に認知されていない。自分たちが名付け親となって、新しい市場を作っていく——認知のない市場を切り拓くための布石でした。
同じ12月、Miaomada株式会社を設立。昭和電器の名前では、コンシューマー向けの商品は売りにくい。そして、今後も自社商品の開発を続けていくという覚悟の表れでもありました。受託加工だけではなく、自分たちの商品で勝負していく——そのための会社です。
しかし、製品ができても課題は残ります。プロテインディスペンサーはそもそも世の中に認知されていない商品です。そのまま売っても売れない。しかも昭和電器は受託加工業で、消費者に直接販売した経験がない。
考えた末にたどり着いたのが、Makuakeでした。イノベーターやアーリーアダプター層に最初に届けるなら、クラウドファンディングが最適だと考えたのです。その後Amazonで一般販売に移行する計画でした。
なお、DP-M1は米国では販売できないことはわかっていました。しかしこの時点で、すでに米国市場は視野に入っていました。当時調べた限り、米国のプロテイン市場は日本の6〜7倍。最終的にはあの市場に出たい——計画とまでは言えないものの、その思いは最初からありました。
Makuake公開中に発覚した大問題
2022年11月、MakuakeでDP-M1のプロジェクトを公開。1ヶ月間の募集を経て、2023年3月までに支援者へ届けるスケジュールで動き始めました。
ところが、プロジェクト公開中に大きな問題が発覚します。
開発中に試していたプロテインは3種類程度。商品に添付する計量一覧表を作ろうと、約100種類のプロテインを買い集めてテストしたところ、まったく計量できないプロテインが出てきたのです。粉が落ちない。
プロテインパウダーは、メーカーや種類によって粉の質感がまるで違います。開発中の3種類では問題なくても、世の中のプロテインすべてに対応できるわけではなかった。
計量部分の金型を大特急で作り直し、当初公開していた仕様も一部変更せざるを得ませんでした。クラウドファンディング進行中の設計変更は、大きなプレッシャーでした。
133人が選んだ「最初の答え」
金型の作り直しを経て、DP-M1は完成。Makuakeでは133人のサポーターから149台、応援購入総額189万5,000円という結果でした。

売れるのか売れないのか、本当にまったくわからなかった。受託加工業から消費者向け販売への転換は、暗中模索そのものでした。価格の付け方一つとっても、B2Bでは当たり前だった税抜き計算がB2Cでは通用しない。上代・下代の考え方、個別配送の送料負担——製造業の常識とコンシューマービジネスの常識は、同じ「ものづくり」でもまるで違いました。
それでも、133人が「欲しい」と言ってくれた。この事実は、何よりも大きな手応えでした。2023年4月にはAmazonでの一般販売も開始しています。
そして、すべての支援者にDP-M1を届け終えた段階で、すでに次の構想が動き始めていました。電動化です。この電動化への挑戦が、次のDP-M2につながっていくことになります。
次回「開発ストーリー【後編】」では、DP-M1の課題を踏まえて電動化に挑んだDP-M2の開発と、米国Kickstarterへの挑戦についてお伝えします。
毎朝のプロテインをもっと手軽に
ALENNEプロテインディスペンサーは、スプーン不要・片手操作で、毎日の計量を5秒に変えます。特許取得の計量機構で、粉こぼれや計量のストレスから解放されます。
